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非通知着信 

08:05
非通知設定

珍しく、非通知から着信があった。

あたしは、非通知は着信拒否にしているから、
かけてきた方は繋がらないことになっている。

履歴だけが残る。

「彼だ」

と思った。何の疑いもなく。

なぜなら、今日は教員採用試験の最終面接だから。

彼には、別れる前に試験日を教えてたから。
そして、彼は絶対に覚えてる。

応援メッセージの代わり…なんだと思う。

嬉しかった。
すごく、すごく。

あたしはやっぱり彼に助けられてることに、改めて気付く。

悔しいような、嬉しいような。

なんて、
ただの非通知だったりしてね。

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空洞を塞ぐ方法 

効き過ぎた冷房とすっかり冷めてしまったカフェミスト。

外は暑いのに中は寒いなんて、ヒートアイランドの悪循環だ…

彼とよく待ち合わせていたカフェで、
あたしは文庫本を読む。

そして時々、外を歩く人を眺めて考えごとをするでもなくぼーっとする。


いや、最近は考えることが増えた気がする。




2週間前の月曜日。
あたしはここで泣いていた。

正確には、泣きたいのをこれでもかってくらいに堪えていた。


別れを口に出したのはあたしだった。
随分前からお互い別れたほうがいいと知ってた。

結論が先延ばしになっていたのは、
実行に移すのはどちらか押し付け合ってのか、迷いがあったからなのか、
その両方なのかもしれないけれど、
とにかく先に別れを切り出したのはあたしだった。





「人に、『代わり』なんてないよ。誰かの代わりを探すなんて無理だ。」

眩暈がした。
右手に持つグラスが2重3重に見えた。

大衆居酒屋のチェーン店。
1週間前
いつになくハイペースに2杯目をオーダーしたあたしに、友人が言った。

「代わりを探そうとしちゃだめだ」

一瞬、周りをうずまくサラリーマンの愚痴や高い声で笑い続ける100dBを超える喧騒が、
20dBくらいにダウンした。

「代わりなんていない…」
「そう。澪は彼の代わりになる人なんていないって言うけど、もともと人には代わりなんてないものだよ。代わりって考えちゃだめだ。」

2歳年下の友人が、あたしを諭すように言った。

「そっか。そうだよね。」
あたしの声は100dB以上の喧騒の中に加わった。





マグカップに目を戻して一口飲む。
ん、今日の豆、おいしくない。
彼もすきじゃないだろうな、この味。
彼は苦味が強いのが好きだった。


あ、
…まただ。

最近どこへ行っても「彼なら」「よく彼は」「彼と来た」


彼の記憶が神経細胞に乗ってあたしの脳を駆け巡る。

これじゃぁ、よく聞く失恋病みたい。
感傷に浸るなんてすきじゃない。



「ダサ…」

呟いて自嘲してみる。




代わりがいないなら、
彼がいた場所は空席のままになってしまう。

思い出に浸るのは、
もしかしたら、空席を思い出のパーツでどうにかごまかそうとするからなのかもしれない。

脳には今までいた形跡がインプットされているから、
いるはずだった場所にいるはずの人がいない時、
思い出のパーツを引き出しているはずの場所に埋め込もうとするんだ。

きっと、そうだ。



もし「場所」がすっぽり抜けた空洞みたいなものだとしたら、
まったく同じ形をしたものじゃないと適合しない。

まったく同じ人間なんていない。

つまりは、「代わりはいない」のだ。


だからその場所を埋めるには、しばらくは思い出で応急処置をして、
あとは3通りしかない。

①似たようなパーツを探す
②時間に任せて自然治癒力で空洞を塞ぐ
③新しいパーツに合わせて自分の空洞を少しずつ変形させる

ただし、変形させるにはそれなりの労力が必要で。

あたしにはまだ無理だ。




体がすっかり冷えてしまったのは、
冷房のせいなのか、記憶のせいなのか。

冷め切った残りのカフェミストを一気に飲んだ。




彼は、冷めたコーヒーが嫌いだった。

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